ふじわら医院 内科・泌尿器科 広島

内科・泌尿器科
ふじわら医院
広島県広島市南区段原1丁目3-11
啓愛プラザビル3F

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※第1・第3土曜日は休診です。

つれづれ備忘録

2026/2/4 キングオブペイン

師走の、とある夕刻、外来が終わって帰り支度をしているとき電話が鳴った。
「夫が急に腰が痛くなって苦しんでいるので診て欲しい」。近所の方だったので了解したが、小一時間経ってから来院された。嘔吐も加わってトイレからずっと出られなかったので、とのことだった。激痛のためうつ伏せになれないので中腰の姿勢で超音波検査をしたところ右の水腎症が認められた。
右尿管結石で間違いない。いつもならボルタレン座薬を使うところだが手持ちがない。もう薬局は閉まっているだろうし、どうしよう。だめもとでチクチクをしてみるか。
「楽になるからチョッと我慢してくださいねー」といいながら爪楊枝の先で全脊椎の椎骨と椎骨の間隙をチクチク刺激したところ数分後には「痛みも吐き気もなくなった」と笑顔になられた。幸いにも薬局に連絡がついて薬も処方できた。
尿管結石は、キングオブペイン(痛みの王)と言われるくらいの激烈な疼痛に襲われることが多いが、すぐに医療機関にかかれない状況でも打つ手はある。指圧や前述のチクチクが家庭療法として有効なことがあるのだ(補足を参照してください)。なお英国のロックバンド、ポリスに「キングオブペイン」という曲があるが結石の唄ではない。
尿路結石の発生頻度は食生活の欧米化とともに増加しており生涯罹患率は10%を超えている。予防法はシュウ酸を含む食品や動物性たんぱく質の過剰摂取を控えることと水をたくさん飲むこと。意外にもコーヒーや紅茶、緑茶もシュウ酸が多い。何杯も飲むと尿の中にシュウ酸がたくさん排出されて結石の原因となる。しかし救いはある。カルシウム(ちりめんじゃこ、イワシの煮干や牛乳など)を同時に摂取すると腸管でカルシウムと結合してシュウ酸が糞便と一緒に出ていくのでビクビクしながら飲むことはない。
私は結石コレクターである。患者さん(全員男性)が「出ました!」と持ってこられた石を大事に保存している。(写真1)。5mm以上の尿管結石は自然に排石する可能性が低いので体外衝撃波結石破砕術や経尿道的結石破砕術の対象となる。しかし、このコレクションでは5mmを超える石が半数近くを占めている。ひとの自然治癒力は棄てたものではない。写真2の結石は直径10mm長さ15mmと驚くべきサイズである。この石、いつまでも「見つめていたい」と思いませんか?

写真1


写真2


補足:尿管結石の疼痛には腰の志室というツボの指圧が著効することがある。詳しいやり方は「安心」2006年9月号の記事を参照のこと。

   チクチクも冒頭の例のように効くことがある。2021年10月12日の備忘録にチクチク療法として紹介している。

   「キングオブペイン」も「見つめていたい」も1983年のポリスのアルバム「シンクロニシティ」の収録曲。「見つめていたい」は2025年、Spotifyで30億
    回再生を突破した。1999年以前にリリースされた楽曲では初の快挙である。

2026/1/5 pee outdoors

師走には日本人が二人もノーベル賞を受賞して溜飲が下がった人が多かったと思う。理論物理学者の朝永振一郎は酒豪で有名である。1965年、彼のノーベル賞受賞が決まるとあちらこちらからお祝いの酒が送られてきた。酒好きの叔父と祝杯をあげたが酩酊して風呂場で転倒。肋骨を六本骨折したため栄えある授賞式は欠席せざるを得なくなったが、堅苦しい式典が嫌だったので「これこそ怪我の功名」と大いに喜んだ。また、一杯吞んで上機嫌になると自作の落語を一席ぶったという(ドイツ語で!)
大佛次郎(作家)と高浜虚子(俳句の巨匠)の門下生の芸者の三人で対談したときのこと。大佛が彼女の句を激賞すると酔いのまわった朝永は、俳句なんかに上手いも下手もあるもんかと、一句。
立ち小便 よくぞ男に 生まれける
解剖学的見地からは、男性は立って女性は座って排尿するのが理にかなっており、男が立ち小便するのは当たり前。朝永の「立ち小便」はもしかしてアウトドアで致すことであろうか。また「よくぞ男に」の真意は何だろうか。
私は早熟な子だった。一歳にならないうちからオマルで用を足しておりオムツは早々に卒業していたと聞いている。二歳のころだったか。両親は田植えに精を出しており、ひとり田んぼのあぜ道に放っておかれていた。おしっこに行きたくなったがオマルがないので仕方なく、下段の田んぼに向って立ち小便を始めたが、一陣の風にバランスを崩して二メートルほど落下した。幸いにも田んぼには十分に水が張られていたので怪我はしなかったが下半身がずぼっと泥にはまって身動きが取れず泣きもせずに呆然としていたらしい。苦い「立ち小便デビュー」だった。
「男はつらいよ」は昭和を代表する映画シリーズである。渥美清演じるフーテンの寅が浅草寺の境内や日本各地の縁日などで巧みな話術を操り見物人をその気にさせて、しょうもない品物を売りさばく啖呵売(たんかばい)のシーンが見せ場のひとつになっている。「男はつらいよ」を見るまでは、男が立ち小便するのは当たり前だと思っていたのだが・・・寅さん百科「口上芸」を最後までご覧ください。

補足:立ち小便は英語ではpee outdoors  , urinate on the  street 、urinate in the publicなど場所や状況を説明する表現しかない。日本語のように姿勢を強調する言い方はないようである。文化の違いだろうか。