ふじわら医院 内科・泌尿器科 広島

内科・泌尿器科
ふじわら医院
広島県広島市南区段原1丁目3-11
啓愛プラザビル3F

TEL: 082-567-0022

※第1・第3土曜日は休診です。

つれづれ備忘録

2026/3/9 芥川龍之介の木登り

「芥川龍之介が自宅の庭木に登る」ところを撮影した99年前のショートフィルムをユーチューブで観ることができる。NHKの「映像の世紀」から流出したものらしい。あの文豪にこんなお茶目な一面があったとは、と驚いた。
猫をはじめヒョウ、チーター、虎、ライオンなどの猫科の動物は木登りを得意としているのに木に登る犬は見たことがないがどうしてだろうなと思っていた。先日、頭蓋仙骨療法のセッションのために来広した柔道整復師のK氏(2025/09/29のブログ参照)に尋ねた。
鎖骨がない動物は木登りが出来ない。鎖骨があると肩関節の可動域が拡がって木に登ったり獲物を前肢で挟(はさ)むことが可能になる。犬や牛、馬は鎖骨がないため前肢は歩いたり走ったりする機能しかない。猫には小さな鎖骨がある。鎖骨を中心にして前肢と体幹を繋ぐ筋肉があるお陰で木に登ることが出来る。
「豚もおだてりゃ木に登る」という慣用句(?)がある。もともとは会津地方の囃子(はやし)言葉であるが、テレビアニメ「ヤッターマン」シリーズ(1980年前後)で使われて爆発的に流行(はや)り市民権を得て定着した。しかし公式には「ことわざ」として認められていない。それもそのはず、豚には鎖骨がない故(ゆえ)いくらおだてても木に登ることなど能(あた)わぬのだから。

K氏こと金谷康弘氏が著書を出版されました。
頭をゆるめて心身の不調を除く  スゴい手技  頭蓋仙骨療法を使う」 BABジャパン 2026年3月5日初版第1刷発行
プロのセラピストでない、ずぶの素人にも分かりやすいように書いてある。親子やパートナー同士で実践すれば効果的な家庭療法になる。是非ご一読を。



2026/3/3 36年目の推し

時は平成元年、日本中がバブル景気に浮かれていたとき、「三宅裕司のいかすバンド天国(イカ天)」というアマチュアバンドのコンテスト番組が始まった。「たま」や「BEGIN」はこの番組出身である。私は欠かさず見ていたが、1989年5月20日に登場した、ねずみ男の格好をしたベーシストと超絶技巧のギタリストとドラマーの3ピースロックバンド、によるオドロオドロしいパフォーマンスに取り憑かれてしまった。
江戸川乱歩(1894-1965)は推理小説の草分けで、怪人二十面相や名探偵明智小五郎の生みの親だが、黒蜥蜴、屋根裏の散歩者、孤島の鬼、陰獣などの怪奇ミステリーが真骨頂である。乱歩の作品をグループ名に拝借したのが、ねずみ男のバンド、「人間椅子」だ。「人間椅子」は江戸川乱歩をはじめ芥川龍之介、太宰治らの小説を題名にしては怪奇的猟奇的な歌詞とヘビーメタルを融合させた曲を作っており文芸ロッカーと呼ばれている。
ねずみ男、鈴木研一は弘前市出身で上智大学外国語学部を出て一流企業のモスクワ支社に就職が内定していたがバンドを続けるために入社を蹴ってフリーターになった。
地球発19時という番組で当時の彼の初々しい姿を見ることができる。
   NINGEN  ISU    人間椅子   地球発19時
「人間椅子」はイカ天で一時的にブレークしたがすぐに萎(しぼ)んで長い低迷が続いた。だが解散はせずコンスタントにアルバムを出しライブを続けた結果、オズフェスという世界的イベントに招聘されて日本のみならず海外でも人気に火がついた。私は2015年に幕張メッセで開催されたオズフェスに参加して25年推し続けた「人間椅子」の晴れ姿に涙した。今年は36年目になるがいまだに彼らから目が離せないでいる。

最後に「人間椅子」のMVをご覧ください。鈴木青年の変貌ぶりにもご注目を。なお「命売ります」(三島由紀夫原作)では映画「国宝」に出演した舞踊家の田中泯が曲と見事にシンクロした踊りを披露している。「杜子春」(芥川龍之介原作)は終盤に光が点滅するのでご注意ください。

2026/3/3 明智小五郎からの挑戦状(江戸川乱歩「兇器」より文章を一部改変)

港区S署の鑑識課の巡査部長庄司専太郎は難事件があると探偵事務所に明智小五郎を訪ねては彼の智恵を借りていた。今回は兇器が何かがさっぱりわからない殺人事件。
・・・「君は盲点に引っかかっているんだよ」明智はニコニコ笑っていた。喫いさしのタバコを灰皿にい入れると鉛筆を取ってメモ用紙に何か書いた。
「君に面白い問題を出すよ。Oは円の中心だ。OAは半径。OA上のB点から垂直線を立てて円周と交わった点がCだ。更にOからAOに垂直線ODを立てて角ODCが直角になるようにして四辺形OBCDを作る。この図形で長さがわかっているのはABの三インチ、BDの七インチだけだ。この円の直径は何インチになるだろうか?三十秒で答えてくれ」


庄司巡査部長は面食らった。
「むかし、中学で幾何を習ったがもうすっかり忘れている。直径は半径の二倍だからOAの長さが分かればいい。OAのうちでABは三インチなので残るODは何インチかという問題になる。BDは七インチなので底辺七インチのOBDという直角三角形の一辺は・・・」

「だめだよ。三十秒はとっくに過ぎてしまったよ。君は問題をより難しくして考えるんだから。多分ABの三インチに引っかかったんだろう。そうなったら迷宮入りだ。いいかね。OからCに直線を引くんだ。もう解っただろう。直角四辺形(長方形)の対角線は相等しいので半径は七インチ、したがって直径は十四インチだ」
「あーなるほどー。これは面白い謎々ですね」庄司は感心して図を眺めた。
「君は今度の事件でも、このAB線にこだわっているんだよ。ずる賢い犯人はいつもAB線を用意して捜査官をそれに引っ掛けようとしている。さあ今度の事件のAB線は何だろうね。よく考えてみたまえ」

江戸川乱歩は数学の愛好者だったらしい。推理小説のトリックを生み出すのに数学的思考が役に立っていたのかもしれない。

2026/3/2  I DREAMED THERE WAS NO WAR

ホテルカリフォルニア(1976年)の大ヒットで知られるイーグルスのリーダー格のグレン・フライは、2016年に67歳で亡くなった。死因はガンでも心血管イベントでもなく、彼が患っていた慢性関節リウマチと潰瘍性大腸炎の合併症とされている。いずれも自己免疫疾患であり私には他人(ひと)ごととは思えない。
イーグルスは2007年にロングロードアウトオブエデンというスタジオアルバムを発表した。その中の一曲はグレン・フライの作品で2009年のグラミー賞のベストポップインスツルメントパフォーマンス賞に輝いた。人生最後の作品となったそのナンバーは、I  DREAMED  THERE  WAS  NO  WAR 。蕩(とろ)けるような美しいメロディーにはいつも(事あるごとに)癒されてきたのだが、今日、2月28日は聴いていて虚しさと絶望感と怒りに包まれた。

トランプとネタニエフの野郎がイランに戦争を仕掛けやがったのだ。

2026/2/24 ど真ん中のストレート

1975年10月15日広島カープは後楽園球場で巨人を破りセ・リーグ初優勝を達成した。自宅で優勝の瞬間を見届けた私は居ても立っても居られなくなって繫華街に直行したが至るところで人また人が狂喜乱舞していた。日本シリーズは阪急と対戦したが残念ながら2引き分け4敗で敗退した。このときの阪急の抑え投手はルーキー山口高志。「バットにかすりもしない」ストレートを武器にして6試合中5試合に登板し1勝2セーブでMVPに輝いた。そのころアメリカではブルーススプリングスティーンはサードアルバム「明日なき暴走」で一気にブレイクしていた。現在、山口高志は75歳、ブルーススプリングスティーンは76歳。当然ながら山口高志は球界を引退しているが、ブルーススプリングスティーンは現役続行中である。さて、トランプ政権は移民排除政策のターゲットとしたミネアポリスに国家安全保障省(DHS)直属の移民税関捜査局(ICE)の覆面部隊を派遣して暴力的弾圧を行なったが、1月7日に一人目、1月24日に二人目の市民が射殺された。これを受けてブルーススプリングスティーンは1月24日、急遽、新曲を書き下ろし、27日にレコーディング、28日にリリース、29日にMVを公開した。「ストリートオブミネアポリス」である。異例なスピードでできたこの曲の歌詞には、犠牲者、DHSやICEの責任者の名前、覆面部隊による暴力の描写、市民の抗議運動そしてトランプへの怒りが直接的に表現されており、安全圏に身を置かず一切の忖度(そんたく)も逃げもない。まさにど真ん中のストレートである。「明日なき暴走」から半世紀、喜寿を迎える老人とは信じられない、いまだに全力疾走を続けるブルーススプリングスティーン、凄すぎる。

2026/2/24 血を出す

「血」のついた慣用句には、血が通う、血が騒ぐ、血が上る、血で血を洗う、血も涙もない、血湧き肉躍る、血の出るような、などがある。
・・・梅田新地のとある行きつけのスナックに妻とカラオケに行っていた。隣りに六十代の女性がいて、いきなり意識を失ってひっくり返った。救急車を呼んだが不法駐車がいっぱいでなかなか到着しない。マスターに「先生、どうにかしてくれ」と懇願された。ちょうどいいことに縫い針を持っている人がいたので、それを借りてライターで焼いてから彼女の小指の爪の生え際に刺して「血を出した」ところ息を吹き返した・・・葉室頼昭著「神道のこころ」より抜粋。
「血を出す」手技は刺絡という。葉室先生は日本の小児形成外科のパイオニアであったが東洋医学にも造詣が深かった。神道の研鑽も積んで春日大社の宮司になられた。
16世紀の朝鮮王朝で宮廷の料理人から国王の主治医に上りつめた実在の人物を主人公にした韓国ドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」にも刺絡が起死回生の効果をもたらすシーンがあるようだ。私も昔から刺絡を行っているが(2023年3月2日のブログ参照)ちょっとした不定愁訴にまあまあ有効かな、という程度の印象しか持っていなかった。しかし、ある患者さんから勧められた刺絡の本(浅見鉄男著)が転機となって刺絡の凄さが実感できるようになった。浅見先生曰く、たいていの病気は交感神経か副交感神経のどちらかが異常に亢進(暴走)しており刺絡で暴走にブレーキをかければ治る。手技は簡単で、副交感神経の亢進がある場合は両手の薬指と両足の第4趾の爪の生え際に注射針を刺して血を40滴絞り出すだけ(写真参照)。アレルギーや気管支喘息、自己免疫疾患は副交感神経が暴走しているのでそれにブレーキをかければよい。半信半疑だったが急性の蕁麻疹や気管支喘息のひどい喘鳴が刺絡が終わらないうちから治っていくのを経験してびっくりした。
私は2024年の暮れから全身の皮膚の痒みと紅斑に悩まされていたが一年前に心臓、肝臓、腎臓、甲状腺が同時に異常を来たした。好酸球が著明に増えていたことから一種の自己免疫疾患だろうと自己診断した。休診や入院、ステロイドは避けたかったので浅見流刺絡に一縷の望みをかけることにした。連日刺絡を行い好酸球の動きを頻繫に見ていったが好酸球は急カーブで減っていった。それと並行して搔痒感や紅斑、全身の浮腫、息切れなども快方に向かった(2025年8月4日のブログ参照)。
今は週一回刺絡をしているが好酸球は正常値で免疫系の「明日なき暴走」はなく健やかな日々をおくっている。

補足4:明日なき暴走


2026/2/4 キングオブペイン

師走の、とある夕刻、外来が終わって帰り支度をしているとき電話が鳴った。
「夫が急に腰が痛くなって苦しんでいるので診て欲しい」。近所の方だったので了解したが、小一時間経ってから来院された。嘔吐も加わってトイレからずっと出られなかったので、とのことだった。激痛のためうつ伏せになれないので中腰の姿勢で超音波検査をしたところ右の水腎症が認められた。
右尿管結石で間違いない。いつもならボルタレン座薬を使うところだが手持ちがない。もう薬局は閉まっているだろうし、どうしよう。だめもとでチクチクをしてみるか。
「楽になるからチョッと我慢してくださいねー」といいながら爪楊枝の先で全脊椎の椎骨と椎骨の間隙をチクチク刺激したところ数分後には「痛みも吐き気もなくなった」と笑顔になられた。幸いにも薬局に連絡がついて薬も処方できた。
尿管結石は、キングオブペイン(痛みの王)と言われるくらいの激烈な疼痛に襲われることが多いが、すぐに医療機関にかかれない状況でも打つ手はある。指圧や前述のチクチクが家庭療法として有効なことがあるのだ(補足を参照してください)。なお英国のロックバンド、ポリスに「キングオブペイン」という曲があるが結石の唄ではない。
尿路結石の発生頻度は食生活の欧米化とともに増加しており生涯罹患率は10%を超えている。予防法はシュウ酸を含む食品や動物性たんぱく質の過剰摂取を控えることと水をたくさん飲むこと。意外にもコーヒーや紅茶、緑茶もシュウ酸が多い。何杯も飲むと尿の中にシュウ酸がたくさん排出されて結石の原因となる。しかし救いはある。カルシウム(ちりめんじゃこ、イワシの煮干や牛乳など)を同時に摂取すると腸管でカルシウムと結合してシュウ酸が糞便と一緒に出ていくのでビクビクしながら飲むことはない。
私は結石コレクターである。患者さん(全員男性)が「出ました!」と持ってこられた石を大事に保存している。(写真1)。5mm以上の尿管結石は自然に排石する可能性が低いので体外衝撃波結石破砕術や経尿道的結石破砕術の対象となる。しかし、このコレクションでは5mmを超える石が半数近くを占めている。ひとの自然治癒力は棄てたものではない。写真2の結石は直径10mm長さ15mmと驚くべきサイズである。この石、いつまでも「見つめていたい」と思いませんか?

写真1


写真2


補足:尿管結石の疼痛には腰の志室というツボの指圧が著効することがある。詳しいやり方は「安心」2006年9月号の記事を参照のこと。

   チクチクも冒頭の例のように効くことがある。2021年10月12日の備忘録にチクチク療法として紹介している。

   「キングオブペイン」も「見つめていたい」も1983年のポリスのアルバム「シンクロニシティ」の収録曲。「見つめていたい」は2025年、Spotifyで30億
    回再生を突破した。1999年以前にリリースされた楽曲では初の快挙である。

2026/1/5 pee outdoors

師走には日本人が二人もノーベル賞を受賞して溜飲が下がった人が多かったと思う。理論物理学者の朝永振一郎は酒豪で有名である。1965年、彼のノーベル賞受賞が決まるとあちらこちらからお祝いの酒が送られてきた。酒好きの叔父と祝杯をあげたが酩酊して風呂場で転倒。肋骨を六本骨折したため栄えある授賞式は欠席せざるを得なくなったが、堅苦しい式典が嫌だったので「これこそ怪我の功名」と大いに喜んだ。また、一杯吞んで上機嫌になると自作の落語を一席ぶったという(ドイツ語で!)
大佛次郎(作家)と高浜虚子(俳句の巨匠)の門下生の芸者の三人で対談したときのこと。大佛が彼女の句を激賞すると酔いのまわった朝永は、俳句なんかに上手いも下手もあるもんかと、一句。
立ち小便 よくぞ男に 生まれける
解剖学的見地からは、男性は立って女性は座って排尿するのが理にかなっており、男が立ち小便するのは当たり前。朝永の「立ち小便」はもしかしてアウトドアで致すことであろうか。また「よくぞ男に」の真意は何だろうか。
私は早熟な子だった。一歳にならないうちからオマルで用を足しておりオムツは早々に卒業していたと聞いている。二歳のころだったか。両親は田植えに精を出しており、ひとり田んぼのあぜ道に放っておかれていた。おしっこに行きたくなったがオマルがないので仕方なく、下段の田んぼに向って立ち小便を始めたが、一陣の風にバランスを崩して二メートルほど落下した。幸いにも田んぼには十分に水が張られていたので怪我はしなかったが下半身がずぼっと泥にはまって身動きが取れず泣きもせずに呆然としていたらしい。苦い「立ち小便デビュー」だった。
「男はつらいよ」は昭和を代表する映画シリーズである。渥美清演じるフーテンの寅が浅草寺の境内や日本各地の縁日などで巧みな話術を操り見物人をその気にさせて、しょうもない品物を売りさばく啖呵売(たんかばい)のシーンが見せ場のひとつになっている。「男はつらいよ」を見るまでは、男が立ち小便するのは当たり前だと思っていたのだが・・・寅さん百科「口上芸」を最後までご覧ください。

補足:立ち小便は英語ではpee outdoors  , urinate on the  street 、urinate in the publicなど場所や状況を説明する表現しかない。日本語のように姿勢を強調する言い方はないようである。文化の違いだろうか。